ども。元書店員のうしらく(@ushiraku)です。
ミステリー小説が大好きなぼくがどハマりした一冊を、今回はご紹介します。
その作品はズバリ!相沢 沙呼さんの『マツリカ・マジョルカ』です。
いやー、表紙に惹かれて即買いしたんですけど、大当たりでしたね。まず、キャラクターの設定で心を持ってかれました。
ドMな童貞男子が、ドSなお姉さまにパシられながら学園の謎を解決していくっていうね。そういう、ぶっ飛んだ設定なんですよ。
さくっと読む目次
相沢 沙呼『マツリカ・マジョルカ』
あらすじ
柴山祐希、高校1年。クラスに居場所を見付けられず、冴えない学校生活を送っていた。そんな彼の毎日が、学校近くの廃墟に住む女子高生マツリカとの出会いで一変する。「柴犬」と呼ばれパシリ扱いされつつも、学園の謎を解明するため、他人と関わることになる祐希。逃げないでいるのは難しいが、本当はそんな必要なんてないのかもしれない……彼の中で何かが変わり始めたとき、自らの秘密も明らかになる出来事が起こり!? やみつき必至の青春ミステリ。
この『マツリカ・マジョルカ』は、学園が舞台のミステリー小説です。
でも、他のミステリー小説と大きく違うのは、全く接点のなかった2人がある日突然出会い、なりゆき…というか主従関係を結んで、学園の謎を解いていくというところにあります。
学校に居場所がない少年祐希(ゆうき)と、学校に通わず廃墟で暮らしている女子高生マツリカがタッグを組むっていう。
両極端の2人が、なぜ謎解きのタッグを組むことになったのか。そして、謎を解いていく中で2人の関係性はどうなっていくのか。
ドSなお姉さまとドMな童貞野郎の組み合わせが、とても面白い物語を運んでくれます。
登場人物
柴山 祐希(しばやま ゆうき)
高校1年生。コミュ障のため学校にもクラスにも馴染めず、毎日を鬱屈と過ごしている。
極度のシスコンで、実の姉に毎日電話やメールをして助けを求める。
思春期特有の「エロかりし心」の持ち主で、女子の胸チラや太ももを凝視するのが好き。ドMな童貞野郎。
マツリカ
年齢不詳だが、おそらく女子高生で、祐希より年上。
なぜか、学校に通わず、廃墟に住んでいる。
そのルックスは超がつくほどの美少女で、しかも頭脳明晰。謎解きも、ほとんどマツリカが担当する。
祐希を「柴犬」と犬扱いし、事あるごとにパシりまくる。ドSなお姉さまキャラ。
『マツリカ・マジョルカ』のオススメポイント3つ
1.祐希とマツリカの”絶対的”主従関係
2人の出会いは、祐希が学園近くの廃墟に立ち寄るところから始まります。
その廃墟の窓辺に、彼女は腰掛けていた。こちらに背を向けて、外に身を乗り出している。腰の辺りまでまっすぐに伸びた黒髪が印象的な女の子だった。
相沢 沙呼/『マツリカ・マジョルカ』より引用
マツリカを初めて目にした祐希は、その美しさに思わず見とれてしまいます。
そして、それと同時に「廃墟に居座るこの美少女は幽霊なのか?」と考えを巡らすことに。女の子が一人で廃墟にいるって、まずないですからね。戸惑いますよそりゃ。
マツリカと話していくうちに、彼女がこの廃墟に住んでいることが発覚。発言の全てが常識はずれなマツリカに疑念を抱きつつも、会話を続ける祐希。
気がつくと、会話の流れで「学園の謎を解決するパシリ」を任命された祐希。
「放課後に 、原始人が現れるかどうか 、監視するだけの仕事よ 。まだ遠慮するつもり ? 」
「監視って 、写真を撮ればいいんですか 」羞恥を振り切るように 、僕は聞き返す 。
「そうよ 。ただし 、原始人が現れたら 、捕まえるの 」
「現れなかったら ? 」
「現れるまで 、根性を見せなさい 」相沢 沙呼/『マツリカ・マジョルカ』より引用
この、「学園にいる原始人を捕まえろ」という命令を受けた瞬間から、2人の絶対的な主従関係が始まるのでした。
2.コミュ障で心を閉ざしている祐希の成長
マツリカからの無理難題すぎる命令にも、何とかかんとか従う祐希。
まあ、マツリカへの下心があるからこそ従順な祐希なのですが、それでも任務をこなしていくうちに、少しずつコミュ障を克服していきます。
というのも、学園の謎を解決していくには、他人への聞き込みが必要になってくるから。
校舎に入り 、溜息を漏らす 。どうしよう 。情報収集なんて本当にあてがなかった 。このまま逃げ帰ったら 、監視している彼女にバレてしまうかもしれない 。二度目の溜息を漏らしたとき 、メ ールの着信音が鳴った 。 『実習生 』とだけ書かれていた 。
相沢 沙呼/『マツリカ・マジョルカ』より引用
マツリカからヒントを貰いながら情報収集を進めていく祐希。
逃げ出したい反面、マツリカから褒められたいという思いから成長していく祐希に、思わず感情を揺さぶられます。「頑張ってくれー!」と応援しちゃうんですよね。ついつい。
3.祐希の「エロかりし観察眼」に共感してしまう
これは男なら「あるある」と思ってしまうんですけど、可愛い女の子の胸チラとか太ももとかって、気が付かぬうちに見てしまうんですよね。ほぼほぼ、条件反射と言ってもいいくらいに。
それは、祐希も例外ではなくて。マツリカの美しい姿を、エロかりし観察眼で凝視しまくります。
見上げると 、目の前に彼女の白い脚があることに気付いた 。近い距離ではなかったけれど 、顔を上げればどうしても視界に収まってしまう位置だった 。
紺色のハイソックスと 、綺麗に磨かれて艶のあるロ ーファ ー 。そこから上へと続いていく優美な曲線 。椅子に面した白い腿のカ ーブ 。プリ ーツの折り目がオリガミみたいに規則正しく直線を描いている 。その下の隙間には 、指先が入り込めそうなくらいの暗闇があった 。なにも見えないとわかっていても 、なぜか眼を凝らしてしまった 。相沢 沙呼/『マツリカ・マジョルカ』より引用
祐希はもう学園の謎解きどうこうよりも、ただ単にマツリカと会って、彼女を凝視したいだけなんじゃないだろうかw
まぁでも、普段はマツリカからパシられるだけの下僕的存在なので、これくらいのご褒美(?)はあってもいいですよね。
長編小説が苦手な方にこそ、『マツリカ・マジョルカ』を読んでほしい
社会人になると仕事が忙しくて、どっぷりと読書に浸る時間を取ることが難しくなってくるかと思います。
以前は長編小説を読むのが好きだったのに、忙しいあまり途中で中断して、また初めから読むのが面倒になって…気がついたら本棚の奥の方に追いやってしまった経験はないでしょうか。ぼくは、わりとあります。
その点、『マツリカ・マジョルカ』は一話完結の短編で話が進んでいくので、とても読みやすいです。
移動中の空き時間や、夜寝る前にちょっとずつ読んでいくことができます。また、一話ずつのボリュームが程よいので、読んでて疲れることがありません。
ぜひ、長編小説が苦手な方や、久しぶりに読書をしたいと思ってる方に読んで欲しい一冊です。