うしらく(@ushiraku)です。ども!
ぼくは、ラノベが好きだ。
だけど、よくある「異世界もの」や「俺TUEEE系」はどうも苦手。
それは多分、ぼくがアラサーだからなのかもしれない。どうにも感情移入できないんだよね。
と、そんなぼくがつい先日、異彩をはなつラノベに出会った。
なんと、10代男女の「自殺」を題材にした作品だ。
『自殺するには向かない季節』という何とも儚げなタイトルを見て即買いしたわけだけども、大当たりだった。
結論から言うと、本作は「タイムスリップして心中する物語」だ。
『自殺するには向かない季節』 / 海老名龍人 (著), 椎名優 (イラスト)
『自殺するには向かない季節』のあらすじ
男子高校生・永瀬 良平(ながせ りょうへい)は、ある1つの自殺事件を自分が引き起こしてしまったと悔やんでいた。
その事件とは、同じクラスの女子生徒・雨宮 翼(あまみや つばさ)の飛び込み自殺。
一度も話したことがないにも関わらず、永瀬の口からでた一言がきっかけで雨宮は電車に飛び込んだ。
いや、これは永瀬の被害妄想であって、実際に雨宮がなにを思って自殺したのかは誰にも分からない。
しかし、永瀬はどうしてもその自殺事件を悔やみきれず、頭を抱えていた。
そんな折、永瀬の友人である深井 冬悟(ふかい とうご)から、ひとつのカプセルを受け取る。
そのカプセルは、飲むだけで過去に遡れる「タイムマシン」だった。
「雨宮が自殺しない未来をつくりたい」と決意した永瀬は迷わずカプセルを飲み込んでタイムスリップするのだが、そう上手くは未来は変わらず。
何をやっても雨宮が自殺してしまう結末に、永瀬はただただ絶望するしかなかった。
永瀬はある朝、同じクラスの生徒、雨宮翼が列車に飛び込む瞬間を目撃してしまう。なぜ死を選ぶのかその理由を考えるが答えは出ない。
そんな永瀬は友人の深井からあるカプセルを渡される。それはとても小さなタイムマシンなのだという。
半信半疑ながらその日の夜にカプセルを飲んだ永瀬が目覚めると、二週間以上も過去に戻っていた!
そして永瀬は、雨宮と雨の屋上で出会うのだが――
引用:Amazon商品ページより
物語の出だしは自殺した少女・雨宮の葬式から始まる
この物語の面白いところは、出だしが「葬式」から始まるところだ。
死んだのは、電車に飛び込んだ女子高生・雨宮 翼(あまみや つばさ)。
その通夜は七月の中旬、終業式を目前に控えた頃に執り行われた。
死んだのが学生だったので、参列者は遺族を除くと学校関係者ばかりだ。まるで学校行事の一つに思えてくる。
どこにも涙はなかった。
引用:『自殺するには向かない季節』より
悲しいのは、その葬式では誰も泣いていなかったこと。
雨宮には友だちがいなかったらしく、死因も誰もしらない。
もともと無口な女の子だったので、永瀬の記憶にも「雨宮がどんな女子だったのか?」の記憶がない。
しかし、そんな雨宮が自殺したのは自分のせいだったのではと、永瀬は罪悪感を感じているのだった。
雨宮とたまたますれ違った駅のホーム。永瀬は「死ね」とつぶやいた
ある日の朝、永瀬は家のトラブルでむしゃくしゃしていた。
そんな気持ちのまま登校したもんだから、混み合っている駅のホームで余計にイライラとしていた。
そして、たまたまポロッと「死ね」とつぶやいてしまったのだが……。
そのとき感じた苛立ちを、瞬間的に吐き出す。
感覚としてはつばを吐くのに似ている。
「ちっ、死ね」
だから駅のホームで人がぶつかってきたときも、衝動的にそう言っただけだ。
ほとんど無意識のことだった。
引用:『自殺するには向かない季節』より
その言葉が、たまたま同じ駅のホームにいた雨宮に届いたようだった。
そして、その直後、雨宮は線路に飛び降りた。
自分のせいで雨宮が自殺したという今を変えるべく、永瀬はタイムスリップをする
雨宮の自殺があって以降、永瀬はずっと罪悪感を抱えていた。
やはり、自分が吐いた「死ね」といった言葉が雨宮を自殺させてしまったと思い込んでいるからだ。
そんな悩みを友人である深井に相談したところ、とあるカプセルを渡された。
そのカプセルは、飲むだけで「タイムスリップ」できるタイムマシンだった。
深井がポケットから取り出したのはプラスチックの小さなケース、いわゆるピルケースだ。中には一つだけカプセルが入っている。
「なんだそれ」
「タイムマシンとも言える。カプセル式だ」
引用:『自殺するには向かない季節』より
タイムスリップは成功したが、確実に未来が変わるわけではない
カプセルを飲んでタイムスリップは成功したものの、一つだけ重要な副作用があった。
それは、簡単に未来が変わることはないということだ。
「そうだ。バタフライ効果は起こらない。個人の行動がどうであれ、死人を出さずに済むという結果をつかむことは難しい」
七月十四日に雨宮翼は死ぬ。
時間を戻り、俺がどう行動しようともその結果を変えることはできなかった。次もそれは変わらないと、深井は忠告してくれている。
引用:『自殺するには向かない季節』より
一度目のタイムスリップで、永瀬は雨宮に接触するところまでは成功した。
そして、自殺しないよう諭すのではなく、電車への飛び込みを阻止するよう働きかけた。
しかし、電車への飛び込み自殺は防げたものの、結局は車にひかれて雨宮は死んでしまった。
どうやら、雨宮が死なない未来にするのはかなり難しいことだと、永瀬は絶望してしまう。
二度目のタイムスリップ。永瀬は今度こそ雨宮を死なせないと誓った
一度目のタイムスリップによる自殺防止は失敗してしまったものの、深井からまた新しいカプセルを貰った。
そのカプセルもまた、タイムマシンだった。
しかし、二度目のタイムスリップは副作用がひどく、おまけに「遡れる日にち」も一度目より減っていた。
つまり、今回のタイムスリップで雨宮の死を阻止できなければ、もうチャンスはないのだ。
これが最後の時間遡行だ。これ以上の延長戦もロスタイムもない。
今度こそ七月十四日までに雨宮の死に方を決めるしかないだろう。
血の跡が残る自分の手のひらを見て、そう思った。
引用:『自殺するには向かない季節』より
永瀬は雨宮と「心中」する未来を選ぶことにした
雨宮と長く過ごすうちに、永瀬の心境にも少しずつ変化がでてきた。
それは、「なぜ自分は生きているのか?」という疑問。
雨宮のことは、今でも理解できない。
なぜわざわざ死のうとしているのか、あの女に慢性的な自殺願望を抱かせた理由はなんなのか、俺にはわからない。
わからないといえば、俺は自分自身のこともよくわかっていなかった。
なんで俺はわざわざ生きているんだろう。
引用:『自殺するには向かない季節』より
雨宮の毒にあてられたのか、もしくは永瀬ももともと自殺願望があったのか。
詳しいところは明らかにされていないけれど、お互いに10代特有の息苦しさを持っていたようだ。
2人が最後に選んだ手段は、学校の屋上からの飛び降り自殺
永瀬と雨宮はいろんな自殺方法を調べてきたけれど、最終的に行き着いたのは「学校の屋上からの飛び降り自殺」だった。
七月十四日、月曜日。天気は雨。時刻は午後五時半。
再び制服に着替えた俺は学校の屋上にいた。
かたわらには雨宮翼がいる。
「ここ、なの?」
「ああ。色々考えたんだけど、結局ここしか思いつかなかった」
「そう」
俺にとってここは天国に一番似ている場所だった。死ぬのであれば、ここからがいい。
引用:『自殺するには向かない季節』より
窮屈な学校生活を送る永瀬にとって、屋上は自分が自由でいられる唯一の場所だった。
だから、そんな自分の居場所を、最後の「死に場所」として選んだのかもしれない。
はたして、学校の屋上から飛び降りた2人の結末はどうなるのか?
10代の少年少女にとって、自殺が世の中への「反抗」なのかもしれない
ぼくらが暮らす現実の世界でも、10代の子たちの自殺は後を絶たない。
自殺を選ぶ理由は人によって異なるだろうけど、共通点もあるように思う。
- 学校でのいじめ
- 不仲な家庭での孤独感
- 将来に展望がもてない
など。挙げるときりがないけども、なんにせよ「生きづらさ」を抱えていることに変わりはない。
だからこそ、そんな生きにくい世の中への反抗として、自殺を選ぶのかもしれない。